TOCHIGI(栃木)

無垢の音|森の奥で出会う、静寂と美食の一夜

「無垢の音(むくのね)」という名前を初めて耳にしたとき、どこか詩的で、でも確かな意志を感じました。自然の音だけが響く場所。人工的な喧騒を遠ざけた先にある、本物の静けさ。そんな期待を胸に、誕生日のお祝いをすべく、8月の那須へと向かいました。もちろん、某雑誌の表紙を飾ったというArt biotop もここをセレクトした理由のひとつ。

Art biotop──森が迎えてくれた

「旅籠 無垢の音」へ続く道には、「Art biotop 無垢の音」の看板が静かに立っている。

石を積み上げた素朴な標柱は、まるでこれから先の世界への結界のようだった。 チェックインを済ませ、まず足を踏み入れたのがアートビオトープの湿地林。白樺に似た樹々が等間隔に並び、その根元に不規則な形の水たまりが広がっている。草の緑と空の青が水面に映り込み、まるで鏡のような世界が広がっていた。 8月末の那須はまだ緑が濃く、湿気を帯びた空気が肺を満たす。普段の旅では気づかないような、風が木の葉をそっとなでる音、遠くの鳥のさえずりが耳に入ってきた。

宿泊をしなくても「Art biotop」へ訪れることはできるけれど、自分のタイミングや人の少ないタイミングで楽しみたいと思うなら断然宿泊することをオススメします。長く旅をしてきたけれど、いい写真を撮影するなら大事なのはタイミングや人の少なさなんだって勉強した。

ラウンジ・バーでひと息

チェックイン後に案内されたラウンジは、落ち着いたトーンで統一された洗練された空間。大きな窓の向こうには森が広がり、室内にいながらも自然の中にいるような感覚が続く。ソファに沈みながら、旅の疲れをゆっくりほぐした。少しコストはかかりますが、やはりコテージを選ぶとこの場所の良さを感じられると思うから是非お試しを。

コテージ──木の温もりに包まれる

滞在するコテージは、木材を贅沢に使ったシンプルで温かな造り。過剰な装飾はなく、木の質感と光の陰影だけで空間が語りかけてくる。テーブル、チェア、すべてが丁寧に選ばれた家具で、触れるたびに気持ちよかった。 夕暮れ時のコテージ外観は圧巻だった。薄暮の空を背景に、室内から漏れるオレンジ色の灯りが、森の中に浮かぶ小さな宇宙のように見えた。その光景をどうしてもカメラに収めたくて、何枚も何枚もシャッターを切った。

たとえ雨だったとしてもお風呂も気持ちいいし、緑の香りを堪能するのもいいと思う。
1番のお気に入りはプライベートがしっかり保たれていること。リラックスするには、最高!

AUBERGE ディナー──森の恵みをコースで

オーベルジュでのディナーはこの宿の真骨頂だ。季節の食材を丁寧に仕立てたコース料理が、一皿ずつ丁寧に運ばれてくる。 シャンパンの繊細な泡から始まり、緑を感じる前菜、赤身の美しいお肉料理、そして金色のクリームが鮮やかなデザートまで。どの皿もその土地の季節を表現しており、食べながら「今、ここにいる」ことを強く意識させてくれる。

窓の外は闇に包まれた森。静寂の中に、グラスの触れる音、炎のはぜる音、そして食材の繊細な香りだけが漂う。これほど五感を研ぎ澄まされる食事は、なかなかない。

チェックアウトの朝

翌9月21日の朝。正面玄関の「無垢の音」の看板の前で、なんとなく立ち止まった。来た時と同じ石の看板なのに、帰る時はどこか愛着を感じてしまう。 ここで過ごした時間は、特別に何かが起きたわけではない。でも、森を歩き、美食を味わい、木の香りの中で眠った——そのすべてが「日常のリセット」になっていた。

無垢の音は、ラグジュアリーでありながら、自然への敬意と「音」へのこだわりが宿全体に静かに流れている特別な場所だった。那須の深い緑の中で、自分の感覚を取り戻したいと思った時、またここへ来たいと思う。素敵な時間をありがとうございました。

無垢の音(Art biotop MUKUNONE)
住所:栃木県那須郡那須町高久乙 2294-3
TEL:0287-73-8169
※那須塩原駅より車で30分

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