TOYAMA(富山)

雪の大谷|立山で出会う、水と氷と雪のストーリー

富山・立山と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは「雪の大谷」ではないでしょうか。

高さ15メートルを超える雪の壁に両側を囲まれたあの景観は、写真で見るたびにいつか行きたいと思っていた場所でした。実は数年前にケーブルカー、高原バスを乗り継ぎ「雪の大谷」へ訪問しています。その時見た立山の景色が忘れられず、今回再訪することを決めたのでした。

ツアーに参加して「雪の大谷」の見え方が変わった話

今年はTravearthの「雪の大谷が語る水と氷の物語」ツアーに参加させていただいたのですが、正直に言うと、想像していた旅とはまったく違うものになりました。

雪の壁は今年も確かに迫力がありました。でもそれ以上に、帰り道でふと気づいたことがあります。あの白い壁は、標高0mから3,000mへと続く、壮大な水の旅のほんの一部分に過ぎなかったということを。

そしてそのことに気づけたことがこのツアーに参加した1番の収穫だったのだなと感じました。


街中から、標高3,000mへ

ツアーの出発点は、黒部ケーブルカーの駅です。

立山へのアクセスは、実は少し複雑です。ケーブルカー、高原バス、ロープウェイ、トローリーバスと、複数の乗り物を乗り継ぎながら高度を上げていきます。その「乗り継ぎ」の煩雑さこそが、立山ツアーの設計の核心です。
そして「雪の大谷」を見たいなら、チケットは争奪戦…予約したとしても長蛇の列に並ぶ必要があります。

しかし、今回のツアーはツアーバスで雪の大谷まで行けるためチケットの争奪戦や長蛇の列をすることなく快適に向かうことができます。荷物はバスにおいて行くことも可能なので念のため持ってきたジャケットを置いておくなんて使い方も可能。無駄な体力を奪うことなく様々なポイントを満喫することができます。

出発前、ガイドさんがひとつの問いを投げかけました。

「立山の水は、どこから来ると思いますか?」

雪が解けたもの、と答えそうになりました。でも正確には、海から蒸発した水蒸気が山頂付近で冷やされて雪になり、春から夏にかけて解けて黒部川へ流れ、やがて日本海へ戻っていく——壮大な循環の話でした。

その言葉を聞いた瞬間から、景色の見え方が変わったのだと思います。


バスが山を登るたびに、季節が変わっていく

バスの窓から眺める景色は、最初はごく普通の山肌でした。でも高度を上げるにつれて、樹の高さが低くなり、緑の濃さが変わっていく。さらに上へ上へと昇るにつれて視界が一気に360度に広がって、遙か下に海が見えました。

ガイドさんが教えてくれたことがあります。「標高が100m上がるごとに、気温は0.65度下がります」と。

3,000m差ということは、気温にして約20度の変化。数時間のうちに、夏から冬へ移動しているようなものです。実際に、出発時に30度近くあった気温は、山頂付近では肌に刺さるような冷たさになっていました。


「雪の大谷」で、立ち止まったこと

そしてついに、雪の大谷へ。

両側にそびえる白い壁は、写真で見るよりずっと存在感がありました。思わず首を上に向けて、その高さを確認してしまいました。

でも私が一番印象に残っているのは、ガイドさんが「壁の色に注目して」と言った瞬間のことです。

よく見ると、雪の壁には層があります。冬のあいだの複数の降雪が、少しずつ積み重なって圧密された痕跡。そして、ところどころに青く見える部分があって、それは圧密が進んで光の屈折率が変わった場所だということでした。

同じ「白い雪」に見えていたものが、突然、何ヶ月もの時間の記録に見えてきました。

雪の上を歩きながら、足元の硬さを感じ、頬に当たる冷気を感じ、どこかから聞こえる雪解け水の音に耳を傾ける。雪はただそこにある静的な存在ではなく、今この瞬間も少しずつ解けて、水になって、下へ流れているのだと——そのことが、はじめてリアルに感じられました。


山頂でのお弁当が、格別だった

余談になりますが、山頂付近で食べたお弁当の香りが忘れられません。

雪が積もる場所にマットを敷き、それぞれ好きな場所に陣取って立山の絶景を愉しめるのは最高!
また標高3,000mの空気の中で食べると、なぜかご飯がふんわりと感じられて、おかずの香りが鮮やかに立ち上がってくるのです。気圧が低いからだと教えてくれましたが、そういう些細な発見が積み重なって、この旅を特別なものにしていた気がします。


みくりが池——雪の下で、少しだけ青が目覚めていた

室堂ターミナルから歩いて約15分。みくりが池へ向かう道を進んでいくと、突然、視界が開けました。湖面はまだほとんど雪に覆われていました。でも、その中央にだけ、ぽっかりと青い水が顔を出していたのです。

「みくりブルー」と呼ばれる、この火山湖特有の深い青。夏になれば湖面全体がその色に染まるそうですが、雪解けのはじまりのこの時期は、白の中にほんのひと片だけ青が宿っている。そのひかえめさが、かえって目を引きました。手前のハイマツの緑、湖を縁取る残雪、その奥にそびえる立山連峰——重なり合う色のグラデーションを前に、しばらく動けませんでした。

これもまた、水の循環のひとコマなのだと、ふと思いました。雪が解けて水になる、その「途中」を、今まさに見ているのだと。


このツアーを特別にしていたのは、ガイドさんの存在だった

正直に言うと、このツアーの価値の半分以上は、ガイドさんにあると思っています。

彼は登山ガイドでもあるそうで、地質のこと、気象のこと、高山植物のこと、水文学のこと——ひとつひとつの話が、「水の循環」という一本の軸に繋がっていました。観光スポットを次々と案内するスタイルではなく、自然界の構造を語り部のように伝えてくれる方でした。

「立山は、日本の自然環境の教科書なんだな」と感じたことが今も残っています。


温泉に浸かりながら、思ったこと

フィナーレは「みくりが池温泉」。
標高2400mという日本一高い温泉で硫黄の香りが漂う本格的な源泉かけ流し。白濁したお湯に浸かった瞬間、慣れない雪の上を数時間歩いた後の疲れがふっと吹き飛ぶようでした。

さっきまで雪の中にいたのに、今は湯に浸かっている。このお湯も、もとをたどれば立山の雪だったかもしれない——そう考えると、なんだかおかしくなって、思わず笑みがこぼれました。

帰宅した今、立山という場所の捉え方が変わっています。

「雪の大谷」は変わらず美しい景観です。でも今の私にとってそれは、海から蒸発した水が旅をして、雪になり、氷になり、また水に戻っていく——その長い物語の、一場面として見えています。

景色を眺めるだけではなく、その場所の「仕組み」を体で理解したい方に、このツアーは心からおすすめできます。

雪の大谷が語る水と氷の物語(travearth)

標高0mの街中から3000mの立山連峰まで壮大な水のストーリーをたどり雪の大谷を目指すツアー

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